店内には開花楼の麺箱。およそ10分で着丼。開花楼のつけ麺ならば、太麺かと思いきや、ストレートの中太麺で、しかも加水率高めと意外な展開だ。
上のレビューの意味が、ツルっと頭に入ってきますでしょうか?ヘビーユーザーが多いラーメンファンのとどまるところのない追及の結果、ライトユーザーが、ブログや食べログなどのレビューを読んでも訳が分からないことがあります。この記事ではこれだけ知っていれば当面困らない、10の用語を説明します。
- 1位 家系(いえけい)=ジャンクなとんこつ醤油
写真:総本家吉村家のラーメン
「家系」(いえけい)とは、簡単に言えば、横浜から広がったとんこつ醤油味のラーメンです。あまり指摘されませんがジャンクともいえるB級風の味に特徴があり、若い男性がターゲットです。
詳しく言えば「吉村家」が元祖で、屋号に「家」がつくことが多くなります。吉村家で修行し独立した直系のお店から、味を模倣したチェーン店まで全国に多数、家系のお店があります。1杯の価格は少し高め。
- 2位 魚介【ぎょかい】豚骨=つけ麺のつけ汁【つゆ】の王者【おうじゃ】
写真:埼玉県「大宮【おおみや】大勝【たいしょう】軒 まるいち」のつけ麺
現在、つけ麺のつけ汁の主流【しゅりゅう】は、東京中野が発祥【はっしょう】とも言われる「魚介豚骨」と呼ばれる濃い【こい】スープです。濃い茶色のものは、たいてい魚介豚骨です。つけ麺に最も合い【もっともあい】、売れる味として王座【おうざ】に定着【ていちゃく】しています。
写真:チェーン店「春樹(はるき)」のつけ麺
チェーン店のつけ麺は魚介豚骨の採用【さいよう】が目立ち【めだち】ます。1か所のセントラルキッチンで製造し、お店では温めるだけという場合が多く、職人【しょくにん】的な要素がある個人店より多少劣って【おとって】しまします。チェーン店は、お店の居住【きょじゅう】性を重視しているため、家賃が高く、材料費を抑え【おさえ】ている面もあるでしょう。
写真:埼玉大宮「蕾(つぼみ)煮干し(にぼし)分家」のつけ麺
魚介豚骨を追い上げる、つけ麺スープの新勢力【せいりょく】が「煮干し」です。家庭用の煮干しダシのような苦味【にがみ】はありません。
- 3位 あつもり=つけ麺の麺を温め【ぬるむ】て出す(通常避けるべき)
写真:【ひやもり】埼玉大宮「蕾(つぼみ)煮干し分家」のつけ麺
つけ麺は、基本的には「ひやもり」という冷水で締めた【しめる】状態で出します。人によってはつけ汁が冷めるからと、冷水で締めた麺を再度温める「あつもり」を頼む【たのむ】人もいます。
しかし麺の風味はひやもりでこそ、というのが定説【ていせつ】で、もし店員に聞かれた場合は「ひやもり」を頼む【たのむ】のが無難【ぶなん】です。風味【ふうみ】を損ねる【そこねる】ため、あつもりを断っている店もあります。温かく食べるイメージの強いうどんも、こだわりのある店主は、できれば冷たい方を食べてほしいそうです。
- 4位 スープ割り=つけ麺のつけ汁を薄め【うすめ】て飲むこと
写真:東京都東部の葛西「麺屋永吉 花鳥風月(かちょうふうげつ)」カリーつけめんのスープ割り
つけ麺のつけ汁は濃く、ラーメンのように飲み干すには少し辛い味になります。スープ割りとは、麺がなくなった後スープで薄めてもらうことです。スープ割は無料で、客席【きゃくせき】付近【ふきん】に「スープ割できます」と書いてあることが多いです。
具体的【ぐたいてき】には、頼めば店員さんが厨房などで薄めてくれるパターンが目立ちますが、スープの入ったポットが置いてある場合もあります。
- 5位 製麺所=自家製【じかせい】以上の実力【じつりょく】
人気ラーメン店は、麺も自家製?とライトユーザーは考え【かんがえ】ますが、うどんとは異なり【ことなり】、ラーメンは外部の製麺所が主流です。製麺所の技術【ぎじゅつ】はかなり高く、お店ごとのオーダーにも応じるため、自家製麺で対抗【たいこう】するのは困難です。
覚えて【おぼえて】おきたい超有名製麺所
・三河屋(みかわや)製麺 … オールマイティな製麺を手がける代表的な製麺所。
・浅草開化楼(あさくさかいかろう) … 極太【ごくぶと】つけ麺の元祖【がんそ】にして権威【けんい】。つけ麺の超人気店「六厘舎」など。
・酒井【さかい】製麺 … 家系総本山の吉村家や直系店舗に卸していることで有名。知っていると一目置かれる新進の製麺所
・麺屋 棣鄂(ていがく)… ミシュラン認定【にんてい】の「やまぐち」などに降ろす製麺所。 ・カネジン食品 … 近年、人気店の採用【さいよう】が増えている製麺所。
- 6位 中太【なかふと】麺=太麺と細【ほそ】麺のあいだの太さ
写真:新潟市【にいがたし】で人気を上げている「しゃがら」。新幹線改札【かいさつ】前。
ライトユーザーが困惑【こんわく】するのは、「中太麺」という言い方ではないでしょうか(ラーメン、つけ麺ともこの用語は使用します)。太麺と細麺の間の太さを、中太麺と呼ぶことが目立ちます。ただし、まれに中麺と呼ぶこともあります。
写真は中太麺です。簡単に【かんたんに】言えば、うどんの太さでも、ひやむぎの細さでもないということです。ある調査によると、細麺や中太麺を好む人は、実に73.8%を占めています。太麺の店の場合、口コミ【くちコミ】評価【ひょうか】が少し低く【ひくく】なっていることは、事実【じじつ】ありますので、太麺好きな方はそこを調整【ちょうせい】して判断します。
好きな麺の太さ
麺 | 食感 |
---|---|
細麺 | 198票(39.6%) |
中太麺 | 171票(34.2%) |
太麺 | 131票(26.2%) |
麺の形状に関しては、ストレート麺とちぢれ麺もよく出てくる用語です。
ちぢれ麺とは文字通り、くるりんと縮れている麺です。昔ながらの中華そばによく使われているように、スープをよく絡めるためあっさりしたスープに適しています。ストレートは、スープを拾いすぎないため味が濃い家系やとんこつなどに合います。
このほか、切り口が長方形である、平打ち麺という用語もときどき登場します。広い意味ではストレートですが、広い断面でスープをある程度拾ってきます。ラーメン店の店主は、スープと相性の良い麺を日夜研究しています。
- 7位 加水率高め=食感重視【じゅうし】
小麦【こむぎ】のどの程度【ていど】の水(正確【せいかく】には塩水【えんすい】)を加える【くわえる】かの割合【わりあい】を、加水率と呼びます。
① 加水率が高い麺(40〜50%程度)
食感重視です。つるつる、もちもちとしていますが、小麦の味はやや伝わり【つたわり】にくくなります。また、水を吸わせたタオルがあまり給水【きゅうすい】しないように、スープを拾いにくい傾向【けいこう】があります。
② 加水率が低い麺(20〜30%程度)
小麦の風味をよく表現し、濃いスープを染み込む【しみこむ】ことで味が深く【ふかく】 なります。食感はざらざらあるいは、ごわごわとしています。
写真:東京都東部船堀「大島」のラーメン。北海道のすみれで修行したお店。
一般に北へ行けば行くほど、加水率の高い縮れ麺が増える傾向にあります。北海道の有名味噌ラーメン店すみれ系となる「大島」でも、加水率が高くもちもちした、縮れ【ちぢれ】麺を使用しています。
「加水率高めの中太ストレート麺」のように、加水率、太さ、形状の順で呼ぶことが多いです。
- 8位 カタメ、バリカタ=博多(長浜)ラーメンの麺のゆで方
写真:小田原【おだわら】の博多【はかた】長浜【ながはま】ラーメン「翔龍」
博多(長浜)ラーメン店では、麺のゆで方に以下のような種類があります。
・粉落とし(湯通し【とおし】)
・ハリガネ
・バリカタ … 人気
・カタメ … 人気
・普通
・やわ
・バリやわ
「普通」または「カタメ」を選べば問題ありませんが、常連がよく注文するのは、「カタメ」「バリカタ」です。たいていの博多ラーメン店で、替え玉を実施しています。
なお、東~北日本によく見られる加水率の高い縮れ麺とは異なり、博多(長浜)ラーメンは、加水率の低いストレート麺です。少しごわごわ感があり、小麦【こむぎ】の風味【ふうみ】が濃いのが特徴です。西日本全般にこの傾向はあります。
- 9位 二郎系=大盛り自慢の豚骨醤油
二郎系のラーメン店は、頻繁【ひんぱん】に行く人とそうでない人に分かれますので、行かなければ知らなくても大丈夫です。二郎系とは三田を発祥とするラーメン店で、とんこつ醤油、大量の背脂【せあぶら】、肉(チャーシュー)、野菜が大盛り、麺は太麺ストレートなどの特徴【とくちょう】があります。
各地にありますが、三田本店で少しでも修業をすればOKの、軽い暖簾分けです。次郎でなく二郎と書きます。なお、修業を行わず独自に真似たお店は、二郎インスパイア系と呼ばれます。
- 10位 無化調(ムカチョウ)=化学(かがく)調味料(ちょうみりょう)無し(なし)
写真:埼玉【さいたま】越谷「こむぎ」のラーメン
無化調とは、化学調味料が無い製法のことです。一般的においしいラーメンと言われるような、インパクトのある味が出しにくくややマイルドな味になりますが、根強いファンがいます。どちらかというと家庭料理の最高峰という味わいになってきます。
バランスよく仕上げるためには化学調味料は不可欠と主張【しゅちょう】する有名店店主もおり、ラーメンマニアのなかでも意見が分かれるところです。